金星ってどんな星?
 金星は地球と大きさも質量もほぼ同じ双子の兄弟のような星です。しかし、その2つの星の様子は全く違うものです。穏やかな地球に対して、金星は気温500度近く、気圧は90気圧。まるで地獄のような星です。雲の中では硫酸の雨も降ります。ただ、その雨は地上へ落ちる途中で蒸発してしまうようです。
 いったい、どうして2つの星にこんな違いが出たのでしょうか?


 金星は太陽系の第2惑星で、水星の次に太陽に近いところにある惑星です。水星、地球、火星とともに、「地球型惑星」と呼ばれる固い表面がある岩石でできた惑星です。
 太陽系誕生時に、小惑星程度の大きさの「微惑星」と呼ばれる小天体が衝突合体することによって、次第に大きな惑星へと成長したのが地球型惑星です。金星は大きさや密度が地球とよく似ており、地球のふたご星と言っても良いほどです。

金星 地球
赤道半径 6052km 6378km
質量 0.815倍(4.869×1024kg) 5.974×1024kg
密度 5.20g/cm3 5.52g/cm3
赤道重力 0.81倍 1倍
自転周期 243日(公転と逆方向) 1日
公転周期 224.70日 365.25日
太陽からの距離(*1) 0.72AU 1AU
双極磁場 なし あり
(*1)軌道長半径。1AU=1億4960万km


 金星は分厚い大気と雲に覆われていて、金星の外からは地面の様子を見ることができません。左の画像は、左側が金星の雲の様子であるのに対して、右側は金星の表面の凹凸を表した画像で、高いところほど色が黄色になるように表示されています。
 この画像は、アメリカNASAの金星探査機マゼランが、レーダー観測によって作成したものです。探査機から電波を金星へ放って、電波が早く返ってくれば金星の山のような高いところ、遅く帰ってくれば低いところ、というように調べた結果です。

 金星と地球の内部はほとんど同じであると考えられています。少し違うのは、地球には固体の核が中心にあるということです。金星は247日で自転するのに対して、地球1日で自転するという大きな違いがあります。
 地球には北極と南極を結ぶ磁力(双極磁場と言います)が働いていますが、金星には地球ほどの大きな磁力が働いていません。惑星の双極磁場は、惑星内部の溶けた部分が自転によって発生する電流が原因で生じると考えられています。地球は十分速く自転していて電流を維持できるのに対して、金星の自転は極めて遅いために、双極磁場のもとになる電流を維持できないのではないかと考えられています。



 金星は大気のほとんどが二酸化炭素です。水蒸気やメタンガスなどとともに地球温暖化ガスの1つとして知られる二酸化炭素がほとんどですので、金星は温暖化によって気温が500度近くにもなっています。



スーパーローテーション
 金星にはスーパーローテーションと呼ばれる、大気の流れが見つかっています。その流れは風速100m。高度6万mのところで吹いていて、4日間で金星を1周してしまいます。
 左の図のように、地球には緯度によって偏西風、貿易風、偏東風という風が吹いています。そしてそれぞれの緯度で、高さ方向に大気が循環しています。しかし、金星は緯度に関係なくどこでも東からの風が吹いています。
 なぜ、金星にそんな風が吹いているのか、金星の高さ方向の大気の循環はどうなっているのか、すぐお隣の星なのに、謎が多い星なのです。



 「はやぶさ」と言えば、みなさん説明しなくとも良くご存知の日本の探査機の名前です。はやぶさは、小惑星「イトカワ」を探査しました。実は、日本の惑星探査はこれまでにまだ成功していません。10年ほど前に「のぞみ」というミッションが行われましたが、あいにくのトラブルで燃料が凍ってしまい、火星に接近はしても通り過ぎてしまいました。しかし、そのトラブル対処の手法は、はやぶさやあかつきの運用に活かされています。
 「あかつき」は、成功すれば、惑星を周回する日本初の探査機となるのです。あかつきの金星到着は2010年12月7日の予定です。楽しみですね。

 これまでに金星探査はアメリカ、旧ソ連、ヨーロッパによって行われてきました。特に分厚く気圧の高い大気を克服して金星表面を撮影することには、アメリカと旧ソ連が国家を挙げて計画に取り組みました。その結果旧ソ連のベネラ7号が金星表面への着陸に成功しました。ベネラ計画では、金星表面の画像も得られています。
 その後アメリカはマゼランという探査機によって、金星全面の地形を計ることにも成功しています。最近では、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)による、ビーナスエキスプレスという金星探査機が金星の周りを回りながら観測を行っています。
 ここでは、その金星探査の歴史が紹介されているサイトを紹介します。
  • アストロアーツ 金星探査の歴史
  • ウィキペディア にて金星で検索


  •  大きさも組成(材料)もよく似た金星と地球が、どうしてこんなにも違う惑星になってしまったのでしょうか?地球の歴史を追いながら見ていきましょう。
     岩石でできた微惑星の衝突によって、金星と地球は生まれました。初めは岩石が溶けるほどの高温で、岩石の中から噴出したガスで初めての大気が作られました。やがて溶けた岩石が冷めてくると、地球では水蒸気が水滴となり雨が降りました。
     金星は地球よりも太陽に近かったこと、そして今よりも雲が薄く金星内部へ太陽光を取り込んでいたためにとても熱い星でした。たとえ地球のような海ができたとしても蒸発してしまいます。金星ではH2Oは液体の水として長く存在できなかったのです。このような理由で金星大気を漂う水蒸気は、太陽光によって水素と酸素に分かれ、軽い水素は宇宙へと逃げていったと考えられています。 --
     地球に降った雨は、大気中の二酸化炭素を吸収し、岩石中のカルシウムなどを溶かし、海を作りました。海では、二酸化炭素とカルシウムが化合して炭酸塩を作り海底へと二酸化炭素を閉じ込めました。その海では、やがて生物が発生し、植物性の生命は二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出しました。動物性の生命はサンゴや貝類のように固い殻を炭酸塩で作ります。サンゴや貝類が死んで海底へ積もった炭酸塩は、堆積物として地中へそ閉じ込められました。
     二酸化炭素が減り酸素が増える環境の変化は、非常に深刻な環境問題であったに違いありません。その変化はゆっくりであったため、生命はその時々の環境に対応して進化しました。酸素が発生した地球では、酸素がオゾンに変わり、紫外線が届かなくなった地上で生命が暮らせるようになったのです。
     2つの星の運命を分けたもの。その原因はたった1つ、太陽からの距離が違うことだけです。


    金星解説のページ
    金星がどんな星なのかを解説しているサイトを紹介します。金星の解説ページへ直接リンクしています。
  • JAXAあかつき特設サイト
  • JAXAスペースインフォメーションセンター
  • 美星天文台

  • VenusCamp.html